中部大学連携市民講座「藤堂家と芭蕉~芭蕉の旅のなぞを探る~」

2022/09/22

 

 

「松尾芭蕉は忍者だった!?」という一見びっくりするような説があるのをご存知ですか。今回の大学連携市民講座では、中部大学人文学部日本語日本文化学科教授の岡本聡先生をお招き して「芭蕉の旅のなぞ」に焦点を当て、ご講演いただきました。

岡本先生はそもそも「芭蕉が忍者だったという説は、ありえないし、そういう説が好きではない」とおっしゃっていますが、文献を調べていくと、俳句を詠むため以外の目的をもって旅していたことがわかるそうです。

芭蕉はもともと出身地の伊賀上野を治めていた藤堂家に仕えていましたが、藤堂家をやめて江戸に拠点を移してからも関係を保っていたとしか思えない数々の記述があるそうです。話はここから、4代将軍家綱と5代将軍綱吉の時代の、血で血を洗うようなクーデターの嵐により、時の権力者が次々変わっていった歴史の説明になりました。藤堂家は巻き込まれて失脚の憂き目に遭いながらも、新しいトップの人に近づいて、返り咲きをはかりました。藤堂家が関係を持っていた権力者たちと、芭蕉も、軒並み屋敷が近かったり、旅の途中で接触していたような記録が残っていて、何かしらの密命を帯びていたことが窺えます。密命の内容は、「日光東照宮の改修を命じられた伊達家の反応は?」「飛騨高山の金山奉行の銀の持ち出しに関する調査」「(当時ブームだった)新種の牡丹を探せ」など多岐にわたり、芭蕉の旅は単なる風雅の旅ではなく、幕府のために情報を集め、見返りにお金をもらっていたという内情がうかがい知れました。

参加者からは、「まるで推理小説のようで面白かった」「今の時代に通ずるような話で興味深かった」という感想が聞かれました。芭蕉の創作の背景を知って、あらためて「おくのほそ道」や「笈の小文」を読むと、違う世界が見えてくるかもしれないですね。