ゆうゆう学級「万葉集を読む」
2022/10/12
「万葉集」はよく耳にする有名な歌集だけど、内容は難しそう。そんなイメージを持つ人が多いのではないでしょうか。本日のゆうゆう学級は、人間環境大学の花井しおり先生を講師としてお招きし、「万葉集を読む」と題してお話を伺いました。
「受講者の皆さんは、今までに漢字だけを使って一つの文章を書いたことがありますか。」はじめに花井先生からこのような質問が出されました。平仮名が使われるようになったのは平安時代ですが、日本最古の歌集である万葉集が作られたのは今からおよそ1300年前で平安時代以前の時代です。全20巻約4500首からなる万葉集の歌はすべてが漢字だけを使って巧みに書かれているそうです。そのうち漢字の表記方法は二つに分類され、漢字の持つ意味を用いた「訓字主体表記」と、もう一つは漢字の持つ意味は関係なく音読み(表音)だけで書かれた「一字一音形式表記」だそうです。講座の中ではそれぞれの特徴が見られる歌を取り上げ、わかりやすく丁寧に説明をしていただきました。その中で、印象的であったのが、「恋」を「孤悲(こひ)」(孤り悲しむ)と表記された歌です。表音表記ではあるものの、漢字の持つ意味が託されていて、万葉集の時代の人が「恋」の思いを「愛おしい人と離れて孤り悲しむこと」と考えていたことが見える表記方法であることを知り、受講者は皆、興味深く話を聞いていました。
その他に「芳(か)を詠む」として、『高松之 此峯迫尓 笠立而 盈盛有 秋香乃吉者』という歌を取り上げられました。所狭しと傘を立て、秋の香りで満ち溢れているというこの歌は、松茸を題材として、その香りの良さを歌ったものだそうです。万葉集の中には香りに焦点を当てた歌は数少なく、珍しい歌に位置付けられているとも伺いました。また、絵手紙などにこの歌を書き添えてみてはと花井先生からご提案もいただきました。とっつきにくく思えていた万葉集が、花井先生のお話で、身近で季節感も感じられ、楽しく時間を忘れて万葉集の世界に浸ることができた講座となりました。