愛知文教大学連携市民講座「武将も愛読していた源氏物語」
2020/11/14
あまり取り上げられることがない武将と源氏物語の関り。今回はこの新しい切り口で源氏物語をはじめとした古典文学に触れる講座を、愛知文教大学人文学科准教授の畠山大二郎先生に行っていただきました。畠山先生は宮中祭祀にも大変造詣が深く、昨年「即位の礼」についての講座を行っていただきましたが、偶然にもこの日は「立皇嗣の礼」の日に当たり、冒頭には、皇太子だけが身につけることができる黄丹袍(おうにのほう)の装束についてのお話がありました。
講義は、公家社会の出来事が中心の平安文学の中で、武士がどのように取り上げられているかの話から始まり、そこには文化を理解しない武士を公家は見下げていたことがわかる記述があるとのことでした。しかし、平安から鎌倉、室町、江戸時代と時代が移り変わり、武家としての社会制度が発達するとともに武家の知的欲求は高まっていき、武将も和歌を詠むなど文芸を志すようになります。中でも源氏物語のように長編で奥の深い物語に武将は憧れを抱き、京都の公家や知識人を招いて読み解き方の講義を受けていたとか。江戸時代には、文学の内容をデザイン化することが盛んになり、上級武家の女性は物語の一場面がデザインされた着物を身につけ、教養の深さを示したそうです。
今日、世の中に広く源氏物語が享受されているのは、時の権力者である武将が愛読し、ステータスとしたからと言っても過言ではないようです。権力争いや戦いに焦点があたることが多い武将ですが、文学を愛し育てることにも深く関わっていたことに、受講された方たちは驚きとともに興味が高まったようでした。
源氏物語の写本や、文学意匠(デザイン)が施された江戸時代の着物の端切れの資料が展示され、受講者はソーシャルディスタンスをとりながら順番に興味深く鑑賞されていました。